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時空を超える志の輔

 先週の『日立世界ふしぎ発見』で立川志の輔師匠が現地レポーター役で出演しておりました。
 見ることができたのは番組終了間際の数分だけだったのですが、ずいぶんと貫禄のついた姿を目にしているうちにむくむくと志の輔熱が沸き立ちまして、ここ数日はもっぱら師匠の落語CDを聴いておりました。

 立川志の輔はご存知五代目立川談志によって率いられた落語立川流の一員です。
 もっとも、多くの人にとっては、NHKの『ためしてガッテン』の司会者といった方が通りがよいかもしれません。(ちなみに私にとっては『クイズ世界はSHOW by ショーバイ!!』のナレーションの人でした)
 そのテレビの中の人が、名実ともにそなえた落語家であったのを知ったのは少なからぬ驚きでした。
 なんとなくいわゆる名人と呼ばれる落語家という人は、高座に上がるのを専らにしていて、テレビなどのマスメディアには登場しないと思っていました。それだけ落語という演芸から縁遠かったのですね。
 実際、数を聞くようになって落語にも少し馴染んできたかなと思えるようになった頃から、テレビやラジオでお名前をうかがう落語家のみなさんが、本業の方でも名人上手といわれる方々なのだとわかりました。
 まあ、そのあたりは余談といたしまして。
 立川志の輔の落語のひとつの特徴は、常にどこか変化を求めているところにあります。
 例えばサゲを変えるとか話の筋立て自体を整理するといったものから、会話のひとつをいじってみるといったところまで、大小様々ではありますが、時代に即した変化を噺につけようと腐心されています。
 それは戦後すぐの創作落語にありがちだったような、昔からある噺の道具立てだけを現代風に設えるといった、時代に即しているように見えて実際は時代に迎合しているだけのものと異なり、噺の持つ現代性を損なわないために時代めいた部分を改める、噺とも時代とも真正面からぶつかりあった格闘ともいうべきものです。
 私がぼんやりとではありますがその奮闘の雰囲気にあてられたのは、以前このブログでも紹介いたしました「死神」であり、また「新・八五郎出世」と題された演目でありました。
「八五郎出世」は「妾馬」とも題される噺で、大名の側室となった妹がお世継ぎを産んで位が上がりそのおかげをもって大工の八五郎も士分を得て出世するという筋立てでありますが、このいかにも時代劇的な噺を、志の輔は最も注目すべき点を八五郎の立身出世ではなく家族の絆にとり、そこから改作を行って時代設定こそ江戸の昔においたままで、見事に現代の観客の胸にも沁み入るものに仕立て直しました。
 この過去と現代の往来を可能にさせてくれる感覚が、志の輔落語に熱中させてくれる要因なのかもしれません。

 そしてこのあたりの感覚は、創作落語にも表れており、志の輔の師匠にあたる談志が「古典落語は生まれた時から古典だった」という旨をよく語っておりましたが、これは正鵠を射ているところが多く、実際、我々の耳にする機会の多い噺でも、成立は案外新しいものも数あります。
 時代をまたぐ感覚が、耳にする者をして普遍的なものに触れさせるのでしょう。
 特に「みどりの窓口」は、清水義範の小説がもとになっているものの、見事なまでに古典の息吹きを内包して落語に作り変えています。
 仮に今後鉄道のみどりの窓口がなくなったとしても、お役所仕事と人間の自己中心さがなくならない限りここにこめられた諧謔は有効だと確信させられる噺であり、ここからも志の輔の時代を見る目の確かさがうかがえます。

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テーマ : 落語 - ジャンル : お笑い

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