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光文社『ハルク』第1巻

 光文社といいますと、カッパブックスにカッパノベルスがまず思い浮かび、時代小説やミステリに強い文庫に、最近では古典新訳文庫の出版など、少々派手さは薄いものの見過ごせない芯のある書籍を手掛けている出版社というイメージがあります。
 ところが、その光文社が意外にも、派手なアメコミの世界に手を広げていた時期がありました。
Hulk01_FC.jpg 昭和53年から54年にかけての短い期間ではありましたが、『キャプテン・アメリカ』や『スパイダーマン』『ファンタスティックフォー』の定番どころはもとより、『シルバーサーファー』『ミズ・マーベル』に『マイティソー』と、今となってもおっと思わせるラインナップを取りそろえておりました。
『ハルク』もシリーズのうちのひとつで、三巻で終了したとはいえ、現状邦訳の出ているハルクメインの単行本が『ワールド・ウォー・ハルク』のみなことを考えれば、十分に注目度の高い扱いだったと思えます。
 先日、行きつけの古本屋さんを何気なくあさっておりますと、この光文社版『ハルク』の一巻がたまたま入荷しておりました。
 それで今回はこの単行本の紹介を。

1:ハルク誕生(『The Incredible Hulk』#3、1962年9月)
 第一巻ということで、ハルクのオリジンが語られています。元はハルクの個人誌第1期第3号に掲載されたオマケコミックのようです。光文社版にクレジットはないですが、ストーリーはスタン・リー、作画はジャック・カービーです。

2:ハルク宇宙人に狙われる(『The Incredible Hulk』#103、1968年5月)
 いきなり5年ほど飛びまして、さらに通巻数も100号空いていますが、実際には7号から102号という巻は存在しません。
 第1期『The Incredible Hulk』誌は6号で終了し、その後キャラクター個人名ではないコミック誌『Tales to Astonish』第59号(1964年9月)よりメインキャラクターとして活躍の場を移します。
 ちなみに、それ以前の同誌の主役はハンク・ピムのアントマン(後半はジャイアントマン)でした。しばらくの間はジャイアントマンとハルクの二大看板で続けられるのですが、途中よりそれもハルクとアトランティスの王サブマリナーにとって代わられ、やがて『Tales to Astonish』誌は101号で終了し、ナンバーを引き継いで102号より第2期『The Incredible Hulk』誌に名前を変えるのでした。嗚呼、アントマン……
 しきりなおしの新シリーズ開幕直後ということで、リック・ジョーンズ、サンダーボルト・ロス将軍、ロス将軍の娘のベティと主要キャラ勢ぞろいです。
 ストーリーとしてはハルクの脅威についてのテレビの公開討論会の様子を、宇宙から傍受していた宇宙生物スペース・パラサイトが、驚くべきハルクの能力を自らに吸収しようと地球へ降り立ち対決するというものです。
 星間を移動する技術を持ちながら、テレビの録画テープにびっくりしてみせるスペース・パラサイトの姿に、いかにもこの時代らしいおおらかさを感じずにはいられません。

3:サイ男の攻撃(『The Incredible Hulk』#104、1968年6月)
 スパイダーマンがらみのヴィランであるライノとの対決を描いた1話もの。
 刑務所を出てから陋巷でくすぶっていたライノは、別の犯罪計画のために担ぎあげられ、ガンマ線研究の権威であるブルース・バナーを誘拐するように指示されます。
 かつてのヴィランとして世間を騒がせていた栄光を忘れられず、ヒーローや力を持ったものと対決することに自らの存在意義を見出していたライノは、やがて大元の犯罪計画が破綻してもハルクと戦うことにこだわり続けます。このあたりの描写には、単なる悪党ではなく、うまく世間に生きられない人間の悲哀がこもっていて、読んでいて切なさがこみあげてきます。
 特に、圧倒的なハルクのパワーの前に打ちのめされながらも、それを認めようとはせず、「きさまは運がいいだけさ」と口にせずにはいられない姿には、身につまされるものがあります。
 短くまとまっていて、個人的にはこの単行本の中で最も好きな話です。

4:放射能怪物ビーストマン(『The Incredible Hulk』#105、1968年7月)
5:捕えられたモンスターたち(『The Incredible Hulk』#106、1968年8月)
6:巨人ロボットが登場(『The Incredible Hulk』#107、1968年9月)
7:ハルクが悩む孤独な戦い(『The Incredible Hulk』#108、1968年10月)

 ライノとの対決でニューヨーク中が混乱の極みに陥っている時、その隙をついてマンハッタン沖にいた一隻の外国船が魚雷のようなものを発射します。それは岸壁にぶつかると中に眠っていた恐るべき怪物を解放したのでした。
 某国(描かれたコマの後ろに毛沢東らしき肖像画があるので中国か)で行われた地下核実験は、地中で仮死状態にあった原始人を呼びさまし、その体質を変化させ、強靭な肉体はそのままに全身から放射能を発散する怪人ビーストマンへと生まれ変わらせたのでした。
 このビーストマンを生物兵器としてアメリカに送り込み、国内からの破壊を狙ったのでしたが、まさにハルクと居合わせ、両者の激しい乱闘がはじまります。
 しかし、ここにソ連と、さらに独自で世界の覇権をねらうマンダリンまで加わり、ハルク(とついでにビーストマン)の力を独占すべく、三つ巴四つ巴の争奪戦がくり広げられることになります。
 4話からなるミニシリーズだけに、ラストでのハルクの暴れっぷりはすさまじく、敵も味方も関係なしに乱戦の舞台となった場所をほとんど更地に変えてしまう光景は壮観でさえあります。

8:地球気象になぞの大異変!(『The Incredible Hulk』#109、1968年11月)
9:ブルース・バナー博士の死!?(『The Incredible Hulk』#110、1968年12月)
10:戦場は宇宙にもあった(『The Incredible Hulk』#111、1969年1月)

 舞台は急遽南極にあるサベッジランドへ。
 マンダリン達を打倒した後も出張ってきた軍隊相手に無双を続けていたハルクでしたが、さんざん暴れまわってから「もう戦いはこりごりだ」と、発射されたミサイルにしがみついて戦線を脱出、けれどもそのせいでコントロールを失った弾道弾は南極に着弾したのでした。
 この頃、実は地球規模の大きな異常気象が起こっており、世界のあらゆる地方で船も飛行機も動かせない事態に発展していることがさらりと告げられます。やがて、それはサベッジランドに置かれた、異星人による地軸を歪ませる装置が原因と判明します。
 やがて地球滅亡の危機にまで発展しかねない装置の存在に気づいた唯一の人物であるブルース・バナー博士は、サベッジランドの支配者であるケイザーの助けを借りつつ、その停止を試みます。
 このあたり、懸命にバナー博士が装置を止めようとする、サベッジランドの他の原住民の妨害を受けハルクに変身、「装置なんて知ったことかー!」のノリはほとんどコントです。
 やがてどうにか装置の停止に成功、けれども、地球侵攻が防がれたことを知った異星人が直接地球に乗り込んできてハルクと対決。宇宙人相手にも圧倒的なパワーを見せつけるハルクでしたが、そこになんだかものものしげなエネルギー体のようなものが現れ、
「わしの前ではおまえの力は無だ! これからお前を破壊する!」
 といかにもものものしいセリフを吐いたところで以下続刊でした。
 そんなこといわれても、次の巻なんて見つからないんですが……

 全編というわけにはいきませんが、かなりハルクの破壊衝動に大きく焦点が当てられた作品集で、敵にしても味方にしても厄介という感じを味わえました。

 ハルクはアメリカの筋肉礼賛を露骨に具現化したキャラクターというような指摘はよく聞きますし、そうした側面がまったくないとはいいきれないとは私も思います。けれども、殊更にそちらばかりを強調することで、別の側面が見えなくなってしまうのは、やはり異文化理解への弊害になるような気がします。
 今回初めてハルクのオンゴーイング誌を読んでみて感じたのですが、ハルクってほとんどヒーローらしい行動をしていないのですね。
 なにかの主義主張があって平和を守る活動をしているわけでもなく、ヴィランと戦うのも向こうがちょっかいをかけてきたからというのがほとんどで相手が動けなくなれば放っておいてどこかへ行ってしまおうともします。それどころか地球を救うべく科学者としての活動をしようとするブルース・バナーをハルクが妨害すらしてますし。歓声や声援とも無縁で、登場するだけで老若男女を問わず恐怖に陥れる。そして自分の感情のおもむくがままに破壊の限りをつくす。
 巨大なパワーをもてあまして自分がコントロールできていない、ほとんど災害のような存在です。
 こうしたハルクが強く受け容れられたのは、第一次世界大戦以降、あれよあれよという間に強大化していったアメリカという国に対する懸念や戸惑いに似たものを、コミックスのキャラクターに透過視したというのもあったように思えます。
 単純な力への渇望だけではなく、そこへの危惧という対照的な感情を揺り動かすからこそ、深くハルクというキャラクターがアメリカ文化に浸透していったのではないでしょうか。

 それはともかくとしまして、六〇年代後半の作品は、ストーリーは大味で人物描写もステレオタイプにかたよるきらいはあるものの、わかりやすい組み立てが魅力で、機会あればハルクだけでなく他のキャラクターも復刊、できれば新訳で読んでみたいと思わせてくれました。

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