FC2ブログ

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

『Gotham Academy vol. 1: Welcome to Gotham Academy』

 ゴッサムアカデミーへ、ようこそ。ここはゴッサムシティでも最高峰の学舎です。前途有望な成績優秀者のみが門をくぐることを許され、講義を受け、秘密の通路の探索を行い、怖ろしい亡霊を呼び起こすことができるのです……



GA_FC.jpg 先ごろ刊行されましたDCのTPB『Gotham Academy vol. 1: Welcome to Gotham Academy』は、ゴッサムシティ内にある同名の学校でくりひろげられる、なんと青春群像劇です。
 舞台となるゴッサムアカデミーは、高校に相当する施設で、各地より優秀な生徒を集めて育成を行っています。国や州、市といった公的機関から助成金をもらうのではなく、企業よりの基金により運営費用をまかなっている、日本的にいうならば独立学校法人です。
 学園内でくり広げられる物語は、およそ三本のストーリーが主となっています。

 ひとつ目は、学校内で暮らす生徒たちの人間関係を中心とした交流のストーリーです。
 夏季休暇を終えて年度の改まった矢先、主人公であるオリーブ・シルバーロックは学校長から呼び出しを受け、そこで新入生であるミア・ミゾグチ(通称マップス)の相談係を命じられます。これはアカデミーの伝統的な風習で、新入生は担当の上級生が割り振られ、マンツーマンで学校での生活に溶け込めるようにサポートしてもらえるようになっています。
 ところが、このマップスとは旧知の仲で、それというのも、オリーブは彼女の兄であるカイルの元ガールフレンドだったのです。
 仲違いをしたというわけでもないにもかかわらず、互いに微妙に距離をおいているオリーブとカイル、百パーセント天然の元気娘(趣味はテーブルトークRPG)のマップスは早速持ち前の好奇心を発揮してあちこちを駆けまわり、そこにオリーブのクラスメイトたちとの交流もからむ、十代半ばのさわがしくもほほえましい、本人たちにはさし迫った人間模様が描かれていきます。

 ストーリーラインのふたつ目は、いわゆる学校の怪談を扱います。
 守りのガーゴイルを屋上に掲げ、フクロウの像などの飾られた、石造りのゴシックな景観を持つ建物をいくつも敷地にそなえた、(おそらく)全寮制の歴史ある学舎ですから、ソノ手の噂話には事欠きません。
 今から百五十年ほど前に、現在の学校敷地内で悲劇的な最期を遂げた少女ミリー・ジェーン。その幽霊が校内に現れるという話がストーリーの大きな要点になります。
 やがて少女のつけていた日記が思わぬ発見をうながし、オリーブたちは学校の奥深くに眠る秘密に足を踏み込んでいくのですが……
 物語としては、このふたつ目のラインが最も濃く描かれ、主として引っ張っていく形になります。

 最後の線は主人公オリーブ・シルバーロックに関するものです。
 こちらは断片的で、明確には語られておらず、ほとんど「何か」をにおわすだけで終始しているのですが、それを簡潔にまとめるならば、この物語の開幕する直前の夏季休暇中にオリーブは大きな事件に巻き込まれ、あまりに大きなショックを受けたために本人も記憶を閉ざして思い出せなくなっている、というものです。
 この事件が元ボーイフレンドのカイルとの間に距離を生み、さらにはふたつ目の怪談話にもかかわってきて、三つのストーリーはばらばらにくり広げられながらも、時折からみ合って結び目となり思わぬ関連をみせます。

 もちろんDCにはティーンタイタンズのようなティーンエイジャーで構成されたヒーローチームも存在しますが、スーパーパワーも持たず一般人レベルの少年少女を主人公にしたコミックスというのは、寡聞にして知りません。
 十代の彼らが年相応に悩み、限界を覚えつつ不器用ながらも、三本のストーリーの綾に組み込まれ、あまり深刻になり過ぎることなく、コメディ主体として困難に立ち向かう様は、なつかしの少年ものの物語を読むようで、わくわくと胸を高鳴らせてくれます。
 個人的には現行のDCのシリーズで、最も楽しみにしているもののひとつです。

 と、ここまで書いてきましたが、舞台がゴッサムシティである以上、もちろんアノ世界最高の探偵サンの出番も用意されています。
 そもそもゴッサムアカデミーの大きな財源となっているのがウェイン基金、そう当主にブルース・ウェインをおくウェイン財団がかかわっているのですから。
 ただし、現状ではバットマンはオリーブの記憶喪失のきっかけとなった事件についてにおわす程度で、表立って彼女らの行動に介入してくるわけではなく、どちらかというとワキ役に徹しています。
 それよりは、むしろ、巻末でのブルース・ウェインに近しい、「彼」の動向の方が気になります。
 とにもかくにも続刊の気になるシリーズです。

スポンサーサイト

テーマ : ブックレビュー - ジャンル : 小説・文学

コメント

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

トラックバック


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。