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「デッドプール・チームアップ」の原文比較

 ついに発売されました『デッドプール:デッド・ヘッド・リデンプション』、個人的なことですが、ちょうど発売の当日、ヴィレッジブックスのシビル・ウォー・クロスオーバーシリーズの第一期再販『X-MENユニバース:シビル・ウォー』(『ケーブル&デッドプール』が併録されているのです)が届きまして、軽いデッドプール祭状態でした。
 それはさておきまして、『デッド・ヘッド・リデンプション』です。
 正直、原書で読んでいた時には、ジョークの半分もわからずにどうにも面白みが薄い本だという感想しかなかったのですが、翻訳を手にしてみますと、あら不思議、全編どこかに笑いがひそませてある密度の高いギャグマンガじゃありませんか。
 自分の英語力のなさに絶望を覚えると同時に、翻訳のありがたさをしみじみ感じさせてもらいました。
 特に日本を舞台とした「デッドプール・チームアップ」は、翻訳の調子と相まって、勘違いされたジャパン観が際立っています。
 改めて原書と比較してみますと、ここはかなり意訳が施されていて、神秘の国NIPPONを表現するのに腐心されているのがわかってきます。
 以下、少し、私のわかったところだけですが、その比較を紹介したいと思います。

 まずは翻訳本81ページの、組織を束ねる会長を出迎えるシーンです。部下の挨拶がどれも「会長」だけのかなり珍妙なこの場面は、原書では「HEY BOSS」となっています。すぐ上のコマで、建物に大きく「ボス」とカタカナ書きされた看板が出ているますが、表札がわりなんでしょうか。
 日本語としてボスはしっくりこないところからの意訳で、「組長」などとしなかったのは、ビジネスマンとされることの多い日本人観に乗ったものでしょうか。この名称ひとつとっても、訳者が語感にかなり気を配っているのがわかります。
 90ページ「クラブ・フィッシュフィッシュ」での女体盛りの歌は、原文ではもっと他愛なくて、

At Mr. Fish Fish, It’s our wish wish to get totally
Fish Fish, Franks and Beans, Sour Cream, in a Tureen!

 ミスター・フィッシュフイッシュという店にくれば、客の食べたいものはなんでも揃っているという、店のコマーシャルソングみたいです。
 それを韻を踏んでいるという点だけ残して、「元気モリモリ女体盛り」にしたのは、おおいにアリで、名訳に入る一節じゃないかなと思います。
 余談ですが、私は元の歌詞のFishとwishの連呼に、2000年代はじめの頃に大流行した「おさかな天国」を思い出してしまいました。「さかなさかなさかなー、さかなを食べるとー」っていうアレです。もとはスーパーの鮮魚コーナーでプロモーション用にかかっていたものが、じわじわと人気を得て、十年越しでヒットにつながったとか。
 この「デッドプール・チームアップ」が刊行された1998年の前年、その「おさかな天国」がテレビやラジオなどのメディアで初めてとりあげられて知名度を獲得していきました。もしかしたら、日本についての情報を収集している際に、なにかのきっかけで「おさか天国」をアーティストが聴いたかも、なんて飛躍した想像も少し逞しくしてしまいます。
 その直後、「サヨナラ、バーカ」は原文も「SAYONARA, BAKA!」です。BAKAはともかくとしまして、SAYONARAは海外でも別れの挨拶として認識されているということなのでしょう。
 対照的に94ページの「ワタシ、ニホンゴワカリマセーン!」は原書では英語のセリフとなっていて、オヤカタが「英語でしゃべるのはよせ。わしをあなどるなよ……」と続くのですが、煩瑣になるので短くまとめたようです。オカマバーも、日本語になおすとこなれない説明文になっています。
 97ページ「雌犬突っ張り」は原書でも「MESUINU TSUPPARI」ですが、上のコマでのオヤカタの「蹴返し」は固有名詞でなく詳細な説明文が用意されているため、ライターもオリジナル技として登場させた模様。
 でもいったい、なにを元に「雌犬突っ張り」なんて単語ができたものか……

 オマケ。「フォーブッシュマン」の212ページ。

撃たれたなう。愛毒者のみんな(TωT)ノ~~~
誤爆www ×:愛毒者 ○:愛読者

 は、原文では「撃たれた… 俺はもう助からないだろう… 妻に愛していたと伝えてくれ… あと、来月出る『アベンジャーズ』#1忘れないでくれよ!」です。

 コマの運びや絵によって、ある程度ストーリーの流れを理解して楽しめるコミックも存在しますし、その爽快で豪快なところがアメコミの魅力の大きな部分を占めているのも事実です。けれども、文化や国柄の違い、元の言語のリズムやイントネーションを知っていないと面白さが理解しづらいものというのも、どうしても多くあります。
 今回の『デッドプール:デッド・ヘッド・リデンプション』は、後者に比重のかかっている作品で、それだけに翻訳の必要性とそして困難さを改めて教えてくれる一冊だったと思えます。

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