FC2ブログ

スポンサーサイト

上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

よりぬきデッドプールさん: SINNER-SINNER, CHICKEN DINNER

 連載が長期に渡ることが多いうえに日本のような再版制度のないアメコミでは、新規読者は気になったキャラクターの出自を知るだけでもひと苦労です。
DP26_FC.jpg そういった点への配慮もあるのでしょうが、そのキャラクターの誕生やそれにまつわる話が、折にふれて挿入されてきます。長いエピソードのさなかに回想などで数コマだけ使う場合もあれば、一エピソードまるまる使って新たな解釈や別の側面(別のキャラクター目線など)を盛り込んで描く場合もありさまざまです。
 比較的最近誕生したデッドプールも、とはいえ既に二十年以上の歴史を持ちますので、その御多分にもれずところどころでそうしたオリジンが挿入されています。
 今回紹介する第二期『DEADPOOL』誌第25号「SINNER-SINNER, CHICKEN DINNER」もまたそうした一編で、比較的長いストーリーが終わり、二、三話で完結する短編が続くなかではさみこまれる独立した一編です。
 ペンシラーはカルロ・バルベリー。邦訳の出ている『デッドプール:スーサイド・キングス』でもおなじみの方ですね。

 さて、過去を語るといいましても三人称の視点で挿入されるサブエピソードのような扱いであったり、自らの視点での回想シーンであったり手法は色々です。
(余談ですが、来年三月に邦訳の刊行が予定されている『デッドプール:デッド・ヘッド・リデンプション』の中の一編「デッドプール・チームアップ」では、デッドプールの日本滞在時代の思い出が独白されています)
 この話では、少し特殊な方法がとられています。
 その方法の鍵となる登場人物が、
DP26_01.jpg
 ゴーストライダーです。
 日本でも映画公開されたため、インパクトある姿を覚えている方も少なくはないんじゃないでしょうか。かくいう私もその一人なのですが、まともにアメコミに手を出すまで、ヒーローということも知らないくらいでした。だって、これ日本のマンガだと、どう見ても敵役の……
 と、まあナリこそアレではありますが、マーベルコミックのなかでは屈指の実力者の一人で、使用する能力の一部はなんとあの「星食い」ギャラクタスにさえ通用するというのですから驚きです。
 その能力というのが「ペナンス・ステア(贖罪の眼)」で、ゴーストライダーの眼(といいますか眼窩)をのぞきこむと、それまで自分の犯した罪が再現され、自らその苦しみを味わわなければならなくなるという、恐ろしく心身ともにきつい必殺の一撃です。
DP26_02.jpg
「どうしたよ? さっさとそのクソッタレたビデオの再生大会をはじめたらどうだい?」とわざわざ挑発かまして能力の餌食になったデッドプールでしたが、ところがそうして目にすることになったのはこれまで彼の手で命を断たれた犠牲者の姿ではなく、まだデッドプールと名乗る以前、ウェイド・ウィルソンでしかなかった時代の追体験なのでした。

 ここでデッドプールが見せられるのは、まだハイティーンだった頃、ある事件をきっかけにCIAの特殊部隊にスカウトされた時と、その後他の追随を許さないほど成績優秀な隊員となったウェイド・ウィルソンがガンに冒され余命幾ばくもなくなりウェポンXの被験者となった時のそれぞれ自らの目を通した記憶です。
 これらの記憶は浮世離れしているとはいえ、ところどころで読者が身をつまされるような描写や発言が盛り込まれていて、短いページながら胸をつくところがあります。
 しかし、結果的にいえば、デッドプールはこれらの記憶を再現されただけで、再び意識を取り戻します。見た感じ変化があった様子もなく、いったいどこが贖罪であったのかと首をひねらざるをえません。
 もっとも本人は考えるところがあったらしく、ゴーストライダーことジョニー・ブレイズにいくつか質問を浴びせかけます。(既に役目を終えたゴーストライダーは引っ込んでしまい宿主が表に出ていました)
「お前らは俺を殺しに来たんじゃないのか?」
「俺達じゃない。ゴーストライダーが、だ。それと、本当に殺すつもりだったんなら、今頃あんたくたばってるさ」
 これらから、ゴーストライダーの目的は、デッドプールに過去を直視させることだったと推定されます。
 だとするとその意図がさらに疑問になってくるのですが、おそらくそれは、デッドプールとゴーストライダーが出会った直後の次のような会話にヒントがあるように思えます。
DP26_03.jpg
「お前は殺し屋だ」
「俺は殺し屋じゃなくて傭兵だ!」
 実はこのやりとりは、第二期『DEADPOOL』誌で何度となくくり返されてきたもので、有名なメイドデッドプールのシーンの登場するスパイダーマンをゲストに迎えたエピソードなどでも展開されています。
 ただ、この時の会話が他と大きく異なる点は、デッドプールの主張を聞いたうえで、ゴーストライダーが、
「俺からすればどちらも同じだ」
 と言っているところでしょう。
 ここで語られるのは主観と客観の違いで、自らがいくら主張しようとも、他人の価値観を変えることができなければ容易に無視される事実がぶつけられています。
 そして唯一の主張の根拠となるべき主観も揺らぐものであることを、過去の自分を現在の自分の目を通して見せられることで強制的に自覚させられます。
 第二期『DEADPOOL』誌における大きなテーマの一つに、多くの人に受け容れられようと画策するデッドプールというものがあります。ところが、それがいかに独りよがりなものであるかを思い知らされたのです。
 デッドプールにとってこれほど残酷な罰はなかったでしょう。

TPD05.jpg 普段はおしゃべりな傭兵としてのべつまくなしに軽口をたたくデッドプールの、おちゃらけた顔の奥にしまいこまれているシリアスな、そして悲哀のこもった一面を端的に描いてみせる好短編であるとともに、この後に続くストーリーの展開を予兆する意味でも入念に伏線の準備がされた話で、読みやすくも意義深い一編です。
 刊行本としましてはTPB『DEADPOOL Vol. 5』に収録されています。


スポンサーサイト

テーマ : アニメ・コミック - ジャンル : アニメ・コミック

コメント

コメントの投稿

管理者にだけ表示を許可する

トラックバック


この記事にトラックバックする(FC2ブログユーザー)

上記広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。新しい記事を書くことで広告を消せます。