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デッドさんとデス様

 というわけで、『DEADPOOL CLASSIC vol. 4』に収録されている「DEADPOOL/DEATH Annual ‘98」につきまして。
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 前のブログ記事でも書きましたが、マーベルにおける死を司る女神であるデスと不死身のヒーローというかヴィランというかその時その場でなんでもありなデッドプールは相思相愛の仲であるというのは、デッドプール登場作品の翻訳がはじまる前から、ほうぼうでネタにされていたようです。
 この「DEADPOOL/DEATH Annual ‘98」はそんな二人のなれそめと、さらに超人としてのデッドプールの誕生秘話をもりこんだ話となっています。

DDA02.jpg いきなりだれかにぶん殴られたあげくに、崖から転落してデッドプール死亡という、なかなかにショッキングな幕開けで物語がはじまります。
 当時所持していたテレポーターを使って目的地に到着したところに、不意打ちの一撃を合わせられたのですが、扉一面使ってデッドプールの顔面にほぼ同じサイズの拳が迫っているイラストはなかなかのインパクトです。
 倒れているのと起きているのの二人のデッドプールが写っていますが、半分すけた起きている方が霊体ということなのでしょう。
 その後ろのドクロ顔でローブを羽織ったのがデスです。すぐ次のコマで霊体デッドプールの肩をたたくと、
「おお、愛しのカワイコちゃん。俺ちゃん、キミのこの冷え切った指のことを忘れちゃってたよ」
なんてセリフが返ってきてますので、どうやらマスクとかじゃなくて本当に全身ガイコツみたいです。
 長らく相まみえることのなかった二人の再会を機に、デッドプールは過去を、はじめの出会いを、きっかけを含めて回想していきます。
(以下ラストまでネタバレがあります。ご注意ください)

ありし日のウィルソンさん 兵士ウェイド・ウィルソンは末期のガンに冒され、軍務を離れざるをえなくなっていました。
 けれども、そこで紹介されたのが、カナダ政府が極秘裏に行っているというウェポンXという計画でした。別名ヒーロー工場と呼ばれるこの計画に、通常の治療では手の施しようのなくなったウィルソンは自ら志願します。
 望み通り、彼はヒーリングファクターという再生能力を移植され、一命を取り留めるのですが、この能力によってガン細胞もまた活発化し、内部にはびこっていた病巣が体表にまで現れてくるようになってしまいます。
 この際、絶望のあまり、なかば常軌を逸して身の不運を口にして嘆いていたのをデスが聞いていました。
 死の神デスは、現世の物理法則とは全く異なるところに存在し、どんな遮蔽物も関係なく闊歩することができます。また、それは同時に、人間側からはこの神の姿をとらえることができないことをも意味します。
 ところが、ガンに全身を蝕まれたウィルソンは、死の世界に片足を踏み入れた存在として、デスの姿を察知できたのでした。
 これはまったく特異なケースで、デスは事例としてばかりでなく、ウェイド・ウィルソン個人にも強い関心を示していきます。
DDA04.jpg 驚いたことに、このカップル、最初に惚れたのはデスの方だったんですね。
 それでデスは愛しい男性を手に入れるために、とんでもないことを囁きかけます。
「愛しい人、私のことがほしくない? もし、それなら、こちらの世界に来て。端的にいうなら死んで」
 デスを美女と認識して、こんなお願いにも「ハイ」とこたえてしまうあたり、既にウィルソンの精神もずいぶん蝕まれていたのかもしれません。

 それはともかく、以来ウィルソンの自殺奮闘記がはじまります。
 食事に出された先割れスプーンで喉を突こうとしてみたり、衣服を結び合わせて作ったロープで首を吊ろうとしてみたり、果ては洗濯用のものでしょうか漂白剤をがぶ飲みしてみようとしてみたり。
 けれども、どれもすんでのところで阻止され、ウィルソンは生を繋ぎ止めさせられます。
 そもそもウェポンX自体が、人間をモルモットがわりにして、新兵器の作成を研究するという計画なのですから、そうそうかんたんに死んでもらっては困るのです。
 自殺を試みる度に新たな検査と実験に酷使され、望みは果たされないものなのかと、次第に絶望感すら覚えはじめたある日、ウィルソンに僥倖が射します。(死をなしとげるのに僥倖というのもおかしな話ですが)
 ウェポンXの被験者達を監視する人々に、あからさまに一人だけ浮いているのがいます。武装した兵士姿の面々のなかで、Aと白抜きした黒の全身タイツに身を包んだオールバック。
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 Aマンというド直球なぞんざいネームですが、人並み外れた筋力をそなえた強化人間で、被験者達を監視という名目のもと、絶対的な恐怖を与えて暴力による支配をしいている人物でした。
 このAマンが、フランシスというかわいらしい本名を持っていて、それを本人の目の前で口にすれば、相手を殺しにかかるくらい激昂するという耳より情報をウィルソンは聞きつけたのです。
 早速Aマンの前に進み寄り、他の被験者達の耳目もかまわずに、フランシスを連呼しだします。
 結果は上々、仮死状態ではありましたが、おかげで束の間のデスとの逢瀬を味わえ、ウィルソンはこの方法の有効性を確信したのでした。

DDA06.jpg ありし日の思い出に心躍らせるデッドプール。
 ところが、デスの態度はよそよそしく、口をきいてすらくれません。

 それはともかくとして、Aマンへの対応に気をよくしたのはウィルソンだけではありませんでした。
 実験動物のように使用されるだけ使用されては廃棄されるウェポンXの状況に、被験者達は自棄的になって、自らの居場所をデッドプール(Deadpool)と呼び、それぞれの寿命の長さを賭けの対象にしてすらしていました。当然そんな場所には陰鬱で悲愴な雰囲気が漂っています。
 ところが、そこでジョークすらまじえて絶対的な強者であるAマンを嘲弄したウィルソンの姿は、人々に希望を与え、明るい笑みを取り戻させたのでした。
 実情を知らない彼らは自己犠牲をもいとわず、勇気を鼓舞してくれたウィルソンを「まるでヒーローのようだ」と称えさえします。
 それに困惑したのはウィルソンでした。彼はあくまで自身のために行動しただけであって、他人のことなど顧みてはいませんでした。
 さらに事態はウィルソンの想定を外れて転がります。報復の機会をうかがっていたAマンは、ただ本人を痛めつけるだけでは飽き足らず、まずこの実験場でウィルソンと最も気心の知れた友人の死ぬ様を見せつけたのでした。
「ウェイドはヒーローだ!」
 と最期の際まで叫び続けるのを。
 そうして精神的にまで追い詰めたところで、Aマンはウィルソンの心臓を貫きます。
 さすがのウィルソンも意識が薄れ、対照的にそれまで目には見えていたものの触れることがかなわなかったデスの手の感触がどんどんと強まっていきます。
「それでいいのよ、あなた。さあこちらへ来て、キスをちょうだい」
 死の世界へ誘う最後のくちづけをせがむデスに、ウィルソンもこたえようとしますが、その時不思議な光が心臓の傷を中心として輝きだしました。
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 ヒーリングファクターの暴走でした。
 自分を信じてくれた友人を殺された怒りや、皆の希望を自分勝手に無視した自責の念が沸き起こり、生への執着が死への願いに打ち勝った結果、とても助からなかったであろう傷を回復させてしまったのです。
 そうして息を吹き返したウィルソンは、怒りにまかせて武器をとり、ウェポンXの実験場を破壊しつつAマンに銃弾の雨を浴びせます。
 友のかたきを討ち、返り血にまみれた体で我に返ると、もうデスの姿は見えず、声も聞こえなくなっていることに気付かされたのでした。

 回想を終え、デッドプールはあの時、Aマンへの復讐をとったことにより、デスとの道が閉ざされたこと、そしてAマンことフランシスがまだ生きていて、復讐の誓いを果たさない限りはデスから声をかけてももらえないことを知ります。
 既にデッドプールは自身が仮死状態であることに薄々気づいています。そこで意識を取り戻す間際、最後までよそよそしいデスの手をとり、あの時かなわなかった口づけをかわすのでした。
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「次に会う時は『グッバイ』じゃなくて『ハロー』だから」
 覚醒し、もはや目には映らなくなったデスに向かって、それでもデッドプールは宣言します。

 と、まあ、長くなりましたが、筋立てはこのようなもので、以下フランシスとの因縁に決着をつける#18、#19に続いていきます。こちらも引き続き『DEADPOOL CLASSIC vol. 4』に収録されています。
 コミカルな部分は抑えめで、正気と狂気、我意と他人からの願望に翻弄されながらも、最終的に立ち上がるところにはやはり胸が高鳴るものがありました。
 自由気ままで、誰にも束縛されず行動するデッドプールはもちろん好きなのですが、こうして決めるところは決めてくれる頼りがいのある面に、キャラクターとしての魅力があって、そこに惹かれるのでしょうねえ。
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