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それからの「スパイダーグウェン」

 とうとう邦訳版の刊行をみたスパイダーマン系統のキャラクターの一大クロスオーバーイベント『スパイダーバース』。
ES_02_FC.jpg 古今東西のスパイダーマンが大集合! ついでに新キャラもてんこ盛り! という大盤振る舞いのなかで、その新キャラクター群からいち早く注目を集め、単独誌を確保していったのが通称スパイダーグウェンです。
 これまでのスパイダーマンのデザインを踏襲しながらも、白と黒を基調としたカラリングにパーカーをつけたコスチュームは装飾が少ないにもかかわらず非常に印象的で、私なんかもひと目見るなりすっかりその魅力にやられてしまいました。
 ちなみに何故通称かといいますと、『スパイダーバース』の作中で彼女は一度もそう名乗ってはいませんし、他のキャラクターも呼んではいないからです。
 個人誌を獲得した際に、他のスパイダーフレンズと区別するためにつけられた誌名が、彼女グウェン・ステイシーの扮するスパイダーマン(スパイダーウーマン)で「スパイダーグゥエン Spider-Gwen」なのです。
 正史世界(アース616)とは異なるパラレルワールドにおけるグウェン・ステイシーがスパイダーウーマンとなったオリジンについては、先月末に邦訳刊行された『エッジ・オブ・スパイダーバース』に掲載されておりますので、そちらを参照いただくとしまして、今回の記事ではそのスパイダーグウェンのその後につきましてざっくりと紹介してみたいと思います。

 スパイダーグウェンは夜の物語です。
 ストーリーの大部分が夕方から夜半に展開されるというのもありますが、登場人物の多くが心に大きな傷を抱えており、それが影となって蝕んでいるからです。
 その最たるものであり物語の根幹にかかわってくるものが主人公であるグウェン・ステイシーの内心の暗欝です。グウェンは望むわけでもなく思いもかけず強大な力を手に入れてしまったこと、それが結果として親友の命を奪ってしまったことに深い戸惑いを覚え、自らをどのように処していいかわからず煩悶の日々を送っています。
 いったい自分はどうすべきなのか、なにができるのか。
 それを思いながら、自身の能力を少しでも有意義に使おうとヴィジランテ活動を行っていますが、それが新たな懊悩の原因となっていきます。
 ハゲワシを思わせるヴァルチャー、死亡したピーター・パーカーの遺産であるリザード、そしてグリーンゴブリン……
 襲い掛かるヴィランのほとんどが、グウェンがスパイダーウーマンとして活動しだしたからこそ現れたものなのでした。
「大いなる力には大いなる責任が伴う」
 言葉こそ同じですが、その指す意味はまるで異なりグウェンを苛みます。
 ヴィランばかりでなく、犯罪検挙に異常な執念を燃やし被疑者に対して容赦ない暴力を振るうことさえ憚らないフランク・キャッスル警部、現在収監されている犯罪者たちの総元締めキングピンに忠実に仕える盲目の弁護士マット・マードック、殺された父の恨みを晴らすべく表は歌手の顔をかぶり活動を続けるフェリシアといったひとびともまた、直接間接の違いはあるもののスパイダーウーマンにかかわりながら自らの思惑を果たすべく行動していきます。
 グウェンは時に傷つき、時に精神的に大いに疲弊しながら、そうしたひとびとと対峙していきます。内心の陰のやがて晴れることを願いながら。

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吉野孝雄編『外骨戦中日記』のこと

 宮武外骨。1867(慶応3)年生まれ、1955(昭和30)年没。
 明治の三奇人に数えられたジャーナリストで、不敬罪などによる投獄4回、罰金・発禁処置29回にも及ぶ名実ともに反骨の人士です。
 ユーモアをその得意な武器としていたことが特徴に挙げられ、没後二十年以上経った後に再発見されるきっかけとなったのも、ニセ広告やビジュアル面に訴えかけるそのユーモア部分の先見性によるものでした。
 1867年生まれといえば、同じく明治の三奇人に名を挙げられる南方熊楠、トヨタグループの創始者豊田佐吉、夏目漱石、幸田露伴などといった面々がおりますが、そうしたなかで外骨にだけ与えられた特色は、太平洋戦争をくぐり抜けて戦後にまで生を全うしたというところにあるでしょう。
GD_FC.jpg そして、その外骨は、昭和19年9月6日から昭和21年2月13日までの記録を綴った日記を遺していました。
 折しも太平洋戦争最末期で、日本の主だった都市が焼け野原にされ、やがて敗戦を迎えることになる頃です。その時期の日々の記録を留めていたのです。
 それが今年刊行された『外骨戦中日記』(河出書房新社)に収められました。

 私がこの時代の日記で着目するのは、どうした暮らしが行われていたのかと、戦争をどのように見ていたのかという2点に大体集約されるのですが、このふたつを満足させてくれる記述は非常に少ないといわざるをえません。
 なにしろ、文章が非常にシンプルなのです。
 例として無作為に記述を抜き出してみますと、

十一月二十五日 土 大学行三回 警報と解除のため
        読売新聞社 夕食
        夜八時帰宅
   二十六日 日 在宅 午後警報、防空壕試験入り
        塀外し、肥汲取り、畠手入れ
   二十七日 月 青山静海へ鶏、大学、神田瀬木氏ニ面接
        三百円、自動車―エハガキ多数渡す、空襲来、
        暮帰
   二十八日 火 大学―瀬木氏来る 西田へ百円
        二千円、エハガキ渡す、防空壕修理


 ずっとこんな調子です。まったく感想や所感が入り込まない備忘録のメモ書き程度のもので、キーワードの意味を知らなくては内容を汲み取ることさえ覚束ないことになります。
 例えば文中の「大学」とは、東京帝国大学の法学部内に設立された明治新聞雑誌文庫(通称明治文庫)のことです。外骨は戦後までそこの主任を務めており、主に明治大正期の新聞や雑誌を資料として全国各地から収集しておりました。「エハガキ」もその一環で、昭和初期頃までに発行された絵葉書を集め分類していました。
 瀬木というのは、現在まで残る広告代理店博報堂の当時の経営者瀬木博信、博政兄弟のいずれか、もしくは両方を指します。外骨は兄弟の父親瀬木博尚と昵懇で、それどころか博報堂の立ち上げの際に後ろ盾になった縁があり、その子息からも丁重に扱われていたとのことです。途中の金額は、そうした恩ある外骨へ、瀬木家から支払われていた援助金にあたります。
 と、このようなことを教えてもらわないと、この単語の羅列からでは当時の消息をつかむことさえままなりません。
 幸いにして、編者である吉野孝雄は、子どものなかった外骨の甥にあたり、晩年を同じ家で過ごし最期を看取った人物なので、交遊関係や生活環境については解説という形で逐一補完してくれ、かなりの精度で、八十を間近に控えた外骨の暮らしぶりを再構築してくれます。

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発売直前紹介『デッドプール Vol.5:ウェディング・オブ・デッドプール』

DP_03_05_FC.jpg 劇場版もまだまだ絶賛公開中なわれらがデッドプールさん。コミックスの翻訳もますます絶好調で、今月13日には第3期「Deadpool」誌のTPB第5巻にあたる『デッドプール Vol.5:ウェディング・オブ・デッドプール』が、そして20日には『デスストローク』が刊行されます! え? 後半他人の空似? でもすごく気になるんですもの……

 というわけで、今回は『ウェディング・オブ・デッドプール』のかんたんな紹介を。
 収録作品は第3期「Deadpool」誌の#26から28までと、アニュアルの第1号となります。
 実は、これまで当ブログで、このうちの2話は、
よりぬきデッドプールさん: Death Comes to Tinseltown(#26)
よりぬきデッドプールさん: MADCAPPED!(Annual #1)
 で紹介済みだったりします。
 ですので、残りの2話、そしてこれが、本巻のメインであるデッドプールの結婚にまつわるストーリーになります。
 大雑把にいえば、#27が結婚式当日で、#28がその直後の新婚旅行話にあたります。

 後者からまずいきましょう。デッドプール夫妻がおめでたい旅の行き先に選んだのはなんと日本、ウェイドにとってかつてを過ごしたこの国には、新婦と引き合わせたい友人がいるのでした。けれども、のんびりとした旅行は、ふとしたきっかけから、忍者とヤクザとポケモンの入り混じった大騒動に発展していくのでありました。
 サラリーマンに行き交うひとのひしめく雑踏、そして戦災孤児か、と思わずつっこみを入れたくなるツギハギだらけの服を着た貧しげな子どもたちという、外国から見た現在の日本のステレオタイプなイメージがうかがえる馬鹿馬鹿しくも楽しい一編です。

 そして#27、単行本のほとんど半分を占めるデッドプールの結婚話は、まさにお祭り騒ぎといっていいはちゃめちゃさです。
 ライターとアートに多くのゲストを迎えてのオムニバス短編集パートでは、長く生きてきたウェイド・ウィルソンが過去に体験した結婚や恋愛話が語られ、かつてのオンゴーイング誌やミニシリーズを元ネタに持つものから、メタネタ満載の不条理ギャグまでてんこもり。
 これまで邦訳ではほとんど触れられてこなかったドミノやサノスが出てきたり、劇場版ですっかりおなじみとなったヴァネッサ(もっともコミックとは相当に違いがあるのですが)とのなれそめがあったり、懐かしささえ覚える『マーク・ウィズ・ア・マウス』の番外編があったりで、これまでデッドプールのコミックスを読んできた読者へのサービス満点のプレゼントという感じです。個人的にボン・ダゾのアートがすごい好きなので、『マーク・ウィズ・ア・マウス』絡みの1編は嬉しかったですね。
 そして、見逃せないのは、そのオムニバスにいたる直前の、参加者へ結婚報告を行うショートストーリーです。第3期「Deadpool」誌でお世話になったひとびとが一堂に会する物語展開もさることながら、集合したみんなの笑顔は、これまでの血なまぐさかったりやりきれなかったりすることの多かったデッドプール周辺の鬱屈を晴らしてくれるかのようです。特にウェポンプラス組が楽しげにしている姿には胸が熱くなってきます。

 とにかくドタバタあり、不条理あり、しんみりあり、ヒトラーありと、いい意味ではちゃめちゃが押し寄せてくる『デッドプール Vol.5:ウェディング・オブ・デッドプール』は、デッドプールというキャラクターから想像しやすい息つく間もない展開目白押しな一冊となっています。オススメです!

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