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『デッドプールVol.2:ソウル・ハンター』原文比較

DP_03_02ja_FC.jpg 先日発売されました『デッドプールVol.2:ソウル・ハンター』はもう読まれましたでしょうか。
 第1巻の「デッド・プレジデント」はいわば各キャラクターの顔見せ的なストーリーで、この巻から徐々に全体を貫く大きな物語の姿が明らかになっていきます。
 デッドプールはもちろんS.H.I.E.L.D.のそれぞれの隊員たちの動向についても気になるところではありますが、そのあたりは本編にまかせるとしまして、今回は以前にもやったのと同じような、邦訳本での気になるセリフの原文との比較を。
 饒舌な傭兵デッドプールは、その二つ名の通りのべつまくなくしゃべりっぱなしで、おまけにスラング、ローカルネタ、ダジャレなどなどを隙あらば盛り込んできます。
 その中には翻訳不可能なネタも少なくなく、邦訳本ではそのあたり意味が通るように改変されています。
 ですが、明らかに日本の造語や流行語とわかるセリフがあると、果たして原語ではどうなっているのかと気になるのが人のさがというもので、そこで、備忘録を兼ねまして、個人的に気がついた分だけを挙げてみたいと思います。
 いうまでもありませんが、私に翻訳を批判するような語学力はなく、あくまでも「このセリフって原文だとどうなってるんだろう?」という単純な好奇心からの比較です。それどころか、結局原語でのジョークの意味もつかめていない場所が多々ありますので、このあたり英語に堪能な方の御教示を待ちたいところです。
 引用は邦訳とそのページ数を挙げまして、その後に原文を続けます。

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椎名誠『アド・バード』

AB_FC.jpg 友人の騒風改さんのおすすめで、椎名誠のSF3部作を読んでおりました。
 椎名誠は高校時代に、やはり友人のすすめで『哀愁の町に霧が降るのだ』を読んだきりで、以来ン十年ぶりに手をとった次第です。
 どこかで「SFも書いている」という話はうかがっていたのですが、早合点でモンゴルなどの紀行文と並行してそうした小説作品も発表しているものだと思い込んでいて、実際には『アド・バード』を1987年に連載発表したのを嚆矢としたと初めて知り改めて驚いた次第です。
 その『アド・バード』からはじまり、『水域』『武装島田倉庫』にいたる3作品を椎名誠のSF3部作と呼ぶとのことで、今回1週間ほどかけて3冊を一気に読了いたしました。
 いや、おもしろかった。
 3部作とはいうものの、作品間の直接的な関連は極めて薄いと事前情報を得てはいましたが、全編に通底する雰囲気のようなものがあり、それぞれで切り離しにくい一貫性が感じられました。
 というわけで、これから3回に分けて、ぼつぼつとこの椎名誠SF3部作の感想を書いていきたいと思います。

『アド・バード』(初出:『すばる』1987年9月~1989年12月。単行本:1990年3月)
 栄えある3部作の開幕は、その華々しい語感からは縁遠い、胸苦しい薄暗さに覆われた世界の物語です。
 舞台はなんらかの崩壊のあった後の地球の、おそらく日本と思しき地。空には厚い鈍色の雲がくまなく覆い、一日のうちわずかに日の出の時刻にしか陽光が射し込まない。大地にはコケとも粘菌の類ともとれない独自の進化を遂げた植物や、鉱物とのハイブリッドを果たした昆虫がそこかしこを埋め尽くし、時には人間にまで牙を剥く。
 絶対的な個体数が激減した人間は、それでもところどころでかつての街に立てこもり、ひっそりと暮らしていた。
 K二十一市に住む青年マサルと菊丸の兄弟も、息を殺し日々の暮らしをどうにかたてていました。
 木の枝一本折るだけでもとても見合わない苛烈な罰が与えられ、食糧や水でさえも合成された代物があるばかりで、それですら先細りの気配が色濃く出ていましたが、それでもここで過ごせば屋根と寝床と、なにより見知った人々との触れ合いは確保されていました。
 しかし、ある事態がふたりを、そうした緩やかな死から引き剥がし、別天地への旅へと誘うことになりました。
 死んだとばかり思っていた実の父親が生きているかもしれない。
 その情報にふたりは飛びついたのです。
 そうして、具体的な場所も知らないマザーK市への旅ははじまったのでした。
 この出立の直後から、読者は、このなんらかのカタストロフを迎えた世界が、単なる大破壊後に自然のオーバードーズにさらされただけではないというのを知らされます。
 それはあちこちに残された文明の残滓が、残滓と呼ぶにははばかりのあるほどに自己主張を激しくしているからです。
 大地を空を、そして海までも、あらゆるところにはびこっているのは広告でした。人口飽和の時代を過去に置き去りにして、最早見るものとてなくなった広告だけが、物を人を技術をサービスを、視角や聴覚に訴えかける派手な趣向で宣伝し続けているのです。
 おまけにこの広告は生きています。動物や植物を、サイバネティクスやナノテクノロジーを(余談ではありますが、『アド・バード』が発表された時期にはまだこれらの単語は一般的とはほど遠いものでした)駆使し、状況に応じて体毛を変化させたり、群れの集成をねじ曲げて幾何学的な模様を描けるようにしたり、さらには人間の言葉を発せるようにすらして、何世代にも渡り広告をうてるように作り変えたのでした。
 マサルと菊丸は、その主張しようとする宣伝内容の意図はまったく理解できないままに、かつての科学の粋に翻弄されながら、多くの人と出会い別れをくり返しつつ、目的地である大都市マザーK市へと足を進めていきます。
 無情にも襲い掛かってくる自然と、そして広告に行く手を阻まれながら。

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発売直前紹介『デッドプールVol.2:ソウル・ハンター』

 月刊デッドプール今月の刊行は『デッドプールVol.2:ソウル・ハンター』!
 というわけで、以前のShoProさんの告知が冗談でもなんでもなく、毎月新しい邦訳が出版されておりますわれらがデッドプールさん。
 今月11月18日に発売が予定されているのは、前作『デッドプールVol.1:デッド・プレジデント』からのオンゴーイング誌の続きにあたるストーリーです。

DP_TPB_02_FC.jpg メインとなる「ソウル・ハンター」は、悪魔と契約し超常的な能力を身につけた人々をデッドプールが倒していくというのがおおまかなあらすじ。スーパーヒーローやヴィランの常識とも異なる彼らの能力を、如何にデッドプールが無効化し、もしくはかいくぐっていくかという点が見どころです。
 どうしてそんなことを? と思われるでしょうが、そのあたりの事情はストーリープロットにかかわってきますので、是非とも実際にあたってお確かめください。ひとついえるとすれば、人との絆のため、でしょうか。
 そしてゲストキャラクターが豪華なのもこのシリーズの特色のひとつで、既に大きく告知されているスペリアー・スパイダーマンはもちろん、個人的に嬉しいのはデアデビルの登場です。
 ページ数は決して多いとはいえませんが、お得意のアクロバティックな動きを披露してくれます。あのレッドコスチュームに身を包んだバトルシーンは、案外邦訳版では初めてかもしれません。レーダーセンスの描写も含めまして。

 また、現代から離れて、過去のデッドプールの活躍を紹介する1話完結の短編もこの巻からスタートします。
IM_128_FC.jpg 舞台は70年代末期から80年代初頭にかけてのカリフォルニア、とあるホテルの一室でトニー・スタークは苦悩に打ちひしがれていた……
 ということで映えある第1回のゲストはアイアンマンで、中期では必ず触れられアル中トニー・スタークのイメージを作った「Demon in a Bottle」をパロディ化した作品になっています。
 わざわざ絵柄を当時に合わせて、カラートーンをふんだんに使った、なんとなく私たちがアメコミと聞くと思い浮かべるあのタッチをかなり忠実に再現しています。途中でキャラクターを使ったコマーシャルが入るのも、いかにもという感じです。
 内容はとにかく「ひどい」のひとこと。デッドプールの一挙手一投足が騒ぎを引き起こすのはいつものことなのですが、登場するキャラクターのだれもがどこかネジがゆるんでいて、微妙に狂っています。
 このあたり、本編のシリアスを緩和してくれて、ぶっとんだデッドプールを安心して読んでいられます。

 Vol.1でも書きましたがグロ描写の生々しさはあるものの、『デッドプールVol.2:ソウル・ハンター』も、ギャグ・シリアス・アクションともに満載されたボリュームあるコミックスです。
 開幕1ページ目から思わずつっこんでしまった人は、もうデッドプールの術中にはまってしまっています。

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パンク刑事の再度の挨拶

 今とは少し歴史的事件がずれたイギリス。
 コナン・ドイルやルイス・キャロルはその有名な主人公にまつわるもう一編の著作をものし、元ビートルズのジョン・レノンはアメリカに移住しなかったおかげで命をながらえているような、大筋は変わらないけれども細部に差違が見出されるパラレル英国。
 そこでは第一次世界大戦以降の世界不況がわれわれの知るよりも甚大に社会に根を下ろし、経済の見通しは底なし沼の底をのぞくよりも難しく、特に首都ロンドンの犯罪発生率の増加は目を覆うばかりで、凶悪化と奇怪化もとどまることを知らなかった。
 事件に対する捜査員の人数の圧倒的な不足はもはや付け焼刃の対策では如何ともしようがなく、とうとう政府はある方針を決定する。それがスコットランドヤードの刑事の、ほぼ無審査門戸開放だった。
 市井に溢れる求職者を刑事に仕立て上げることで職業不安定・犯罪発生率上昇・検挙率の低下を一挙に解決する画期的解決策と、机上では理想的な回転を見せた決定だった。
 けれども、あにはからんや、というよりはむしろ案の定、ヒッピーやパンクスまでがスコットランドヤードになだれ込み、警察機構としての機能はほぼ麻痺、汚職・収賄のまかりとおるはき溜めになり果ててしまった。
 司法の堕落と腐敗は、それだけならば官僚の問題と、だれもさして真剣にはとらえなかっただろうが、なにしろ凶悪事件は待ってはくれない。主に上流階級よりそうした現状の改正を強く求める声があがり、それはひとつの法案を生むことになる。
 シャーロック・ホームズ以来の伝統を持つ、警察権力と直接のかかわりを持たない私立探偵の優越を定め、司法とはまったく独立した国家に帰属する捜査機関としての権利を認めたのだった。
 こうして、事件を解決する私立探偵「探偵士」とそれによって検挙された犯人を管理する警察という、小説のような構図が、法的に根拠づけられてしまったのだった。
 物語は、そんなパラレル英国の、やはりボンクラ警察に所属するパンク刑事キッド・ピストルズと相棒の女性刑事ピンク・ベラドンナが、イギリスの童謡「マザーグース」の調べに見立てられる事件に巻き込まれていくところから端を発する。


SCKP_FC.jpg パラレル英国を舞台に、モヒカン頭のスコットランドヤード刑事キッド・ピストルズの活躍する、現在のところ最新刊のミステリ中短編集『キッド・ピストルズの醜態』を読みました。
 1991年の『キッド・ピストルズの冒涜』からはじまり『妄想』『慢心』『最低の帰還』に続く第5作目(番外編ともいえる長編『十三人目の探偵士』を含むと6作目)、しかも初版は2010年でもう5年も前ときておりますので、長期シリーズというよりは、不定期刊行物という方がしっくりくるような気もします。
 どの話も冒頭に英米の古典童謡マザーグースの一節が掲載されていて、それが話全体を象徴する作りとなっています。とはいいましても、『そして誰もいなくなった』のように、話の中で犯人から不可解な謎として提出されるわけではなく、そういわれればそういう風に見える、程度の見立て、それも探偵側からの見立てであることが多いです。
『キッド・ピストルズの醜態』の収録作品は以下のようになっています。

「だらしない男の密室」 ふと目を覚ますと、鍵のかかった見知らぬ部屋にひとり取り残されていた。鍵はすべて内側から掛けられ、床には膨大な量の書類が散乱し、壁には不気味な棺桶が立てかけられている。そして隣接するバスルームにはバラバラに分断された男の死体が……
 単行本冒頭を飾るのに、とってもソレらしい、不可解なクローズドルームをテーマにした一編です。
 通常密室は内部に生存者がいないことを前提としているのですが、それを逆手にとって、前後不覚に陥った人物がひとり、死体とともに密室に取り残されていたらどうなるか、に挑んでいます。
 パンク族のキッドとピンクによる掛け合いが比較的多いのも楽しいところ。

「《革服の男》が多過ぎる」 女性ばかりを誘拐し、その皮をはいで殺害するという猟奇的な《革服の男》事件。その解決から1年を経て、再び同じような手口での殺人が発生した。犯人は元の事件の模倣犯なのか、それとも……
 収録作品内では最も怪奇色が強く、《革服の男》の不気味さが迫ってきます。
 ロンドンといえば霧という、他国の人間からすれば常套的に感じるシチュエーションと、猟奇事件がマッチした作品でした。ハロウィンの時期というのも雰囲気を盛り上げていて、個人的にはラストのお菓子の扱いがいかにもという感じでなんだか好きです。

「三人の災厄の息子の冒険」 映画『SAW』を思わせる覆面の人物によるビデオメッセージからはじまるマザーグースの歌詞を用いての連続娼婦殺人。やがてその矛先はまったく同じ顔をした3人の男に向けられて……
 最後は密閉空間の息詰まりと白い色の印象に残る、いわくいいがたい後味を持つ作品で幕を下ろします。

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