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『ラテンアメリカ組曲』 男爵事始(5)

 一九六八年九月、デューク・エリントン楽団は、リオ・デ・ジャネイロを皮きりとしまして、ブラジル、ウルグアイ、アルゼンチン、チリ、メキシコの南米ツアーを敢行します。
 驚いたことに、これが、結成から四十年に及ぶ老舗ビッグバンドにとっての、初めての赤道以南旅行だったのでした。
『ラテンアメリカ組曲』は、その南米旅行から得られたイマジネーションを、ジャズ組曲に昇華したアルバムです。

・光と影のファンタジー
 しかし、このアルバム、ディスクを再生装置に置く前から、言い知れぬ不安に駆られます。
 ラテンアメリカと聞きますと、一般的に思い浮かべられるイメージ、照りつける太陽、抜けるような青空、エメラルドグリーンの海……
 ところが、そんなもの、ジャケットを隅々まで、目を皿のようにして見まわしてみても、どこにも発見できないのです。
 あるのは上下左右を囲む灰色の、リノリウム張りのように光沢だけはある壁。明らかに書き割りとわかるセットがちらほらと置かれているが、せいぜい一メートルほどしかなく、床に影を落としているから、見た目以上に作り物めいている。ブラジルのコルコバードの丘を模したらしいものがある(上に小さく例の腕を広げたキリスト像らしきものがうかがえる)から、南米の各名所をかたどっているのだろうけど、いかんせん遠すぎてなにがなんだかわからないものも多い。
 そして、その手前ではエリントンが、スタンドマイクを置いて、ほがらかな笑顔で、なにやら歌おうと身構えている。しかし、周囲の壁のせいで、うす暗いセットの中では、圧倒的に光量が不足していて、顔に落ちた影のおかげでいつも以上に黒さが際立っている。
 およそ陽気さからは程遠いジャケットといわざるをえません。

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天狗の羽

 馬琴の随筆集に『烹雑の記』という一冊があります。見慣れない漢字が頭にくっついておりますが、読みは「にまぜのき」だそうで、興味関心のおもむくままに筆を振るったごちゃまぜノートくらいの意味でしょう。
 そのうちの一章が「天狗」と題されて、この不可思議な生き物(?)について紙幅が割かれています。
 ただ、今回は天狗そのものについての記述ではなくて、結びに近い個所で馬琴が書いている次のような文章が引っかかったのでちょっと引用しておきます。

 天狗の画像を見るに、衣被の上に二翼生出たり。彼もし肉翅にあらざりせば、飛行に便なかるべきに、これが衣被は、いかにして裁縫やらん。なしがたかるべきわざにこそ。(中略)又本邦にても、駿河の漁者、三穂の松原にて天人の羽衣といふ物を獲たるよし、猿楽の謡曲に作したれば、天狗の翼も被はづし自由なるものにや。一笑を発すべし。

 かんたんに訳してみますと、

 天狗を描いたという絵は、衣服の上に二枚の翼が突き出ている。もし、その翼が実際に生えているものでないとするならば、飛行に何の役にも立たないだろう。そんな衣裳をどうして作るのか。無意味な所業だろう。また、わが国に羽衣伝説として知られる物語のように、天狗の翼も取り外し自由なものとでもいうつもりだろうか。馬鹿もやすみやすみいえというのだ。

 くらいなものでしょうか。

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