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山田風太郎『戦中派不戦日記』のこと

 このブログを読んでくださっているみなさんは、山田風太郎と聞いてなにを思い浮かべるでしょうか。
『甲賀忍法帖』や『魔界転生』といった、映画やマンガにもなった忍者ものの作品を多くものした作家で、奇想天外荒唐無稽な小説を量産した流行作家でしょうか。
 もしかすると『警視庁草紙』をはじめとした、維新直後の明治時代を舞台とした開化ものに先鞭をつけた時代小説家かもしれません。
 案外、「え? だれそれ?」という答えが、いちばん多いのかもしれません。
 けれども、出会いはどうあれ、今この文章を読んでくださっているという機縁を利用して、是非とも私は、この多くの顔を持った作家のその出発点ともなった『戦中派不戦日記』を紹介したいと考えています。
 山田風太郎は大正十一年、西暦になおせば一九二二年、現在の兵庫県の山村に産まれました。
 例えば日本の代表的歴史小説家である司馬遼太郎、同じく代表的時代小説家である池波正太郎は一才年下にあたりますから、読書家の方にとっては、風太郎がどういう時代に作家として名をなしていたかが想像しやすいかと思います。

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金勢明神譚

 金勢明神を私が最初にとりあげたのは、友人のぼのさんの同人誌だったと思います。
 なんでも書いていいから、というお墨付きをいただいて、当時氏が出していた京極堂の同人誌に、ゲストとしてしあげた小説の冒頭に江戸期の随筆『耳袋』の巻一に収められた「金精神のこと」を引用しました。
 話の大筋は以下のようなものです。

 津軽のとある富貴の家の娘は、妙齢に達し、見目麗しいにもかかわらず婿の来手がない。それもそのはずで、この娘さんの女性器には、歯がびっしりと生えていて、新婚初夜のその際に、男性自身に噛みついてしまう。多くは深手を負い、死者すらも出たという。
 そうして娘さんも家の人々も、ほとほと困っているところに、それならばと婿入りに立候補する若者があった。
 若者は婚礼を済ませた晩、いよいよ同衾する段になり、あわてずさわがず、まずは金属でかたどられた男性器を取り出して、娘さんのあそこに挿しこんだ。すると歯は一本残らず砕け散り、あとには呪わしい身から解き放たれた娘さんだけが残った。
 これ以後、この地方では、件の金属製の男性器をカナマラ様と呼んで、崇敬している。

 金精神が金勢の別名だと思い当たるのは、ずっと後のことで、この時はヴァギナデンタータの典型のような説話内容と、その解決に用いられる金属性の男性器カナマラ様のおかしさにばかり気を取られておりました。
 私の小説自体は、なにしろ一昔も前のものですから、汗顔ものの出来で、今さらとくにとりたてて申し上げることもないのですが、この時調べたカナマラ明神については、ずっと頭のすみにひっかかっていました。

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五人廻し雑感

 落語の話が続きますが、もう一席お付き合いを願います。
「五人廻し」は好きな方に入る噺です。
 筋を申し上げれば、五人の男達が、次から次へと一人の遊女に袖にされるという、ほんとうに他愛ないものになります。
 ところが、このひとつひとつの場面を彩る男達のキャラクターがとてもいい。
 癇癪持ちに伊達男、田舎者に朴念仁とさらにお大尽とくると、落語に出てくる典型ともいえる面々です。
 彼らに共通するのは、気取っているということ。キザなのです。
 乙に澄まして、時に見得を切って、粋に構えて、気炎を上げて、居丈高に振る舞ってみるのも、すべてキザで、気取っているからです。
 けれども、その気取りが肝心の女の前では使われず、不寝番の若い衆にのみ発揮されるところに、男の哀しさ、滑稽さ、そして愛らしさが表われています。これは愛さないわけにはいきません。

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