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サゲのこと

 いまのように便利でなかった時代には、引越といえば大変な苦労だったそうです。
 バストイレつき、冷暖房完備なんていうのは夢のまた夢のお話で、家具の備えつけどころか、畳すら自分で運ばなければならないのが、つい百年ほど前までは当たり前の光景でした。
 そのてん末を笑い話にしたてたのが、上方落語の「宿替え」で、江戸落語の「粗忽の釘」といいますとご存知の方も多いかもしれませんが、あれと非常によく似た構成を持っております。
 別の長屋へと引越をすることに決まった朝、亭主はなにかと口数多く取り仕切ろうとしますが、この人少々そそっかしく、やることなすことピントがずれて手間どるばかり。
 最前申し上げました通り、昔の引越はとにかく荷物が多いのですが、これを持っていくのが男の甲斐性とばかりに、おおいにはりきって持ち上げようとしますが、まったくビクともせずに、さんざんおかみさんに悪態をついたあげく、実は風呂敷包みに家の敷居を通していたという始末。
 ようやくせたろうた(関西弁で背負ったという意味です)かと思いますと、汚名返上とばかりに、俺は先に行っているから、お前は隣近所に別れのあいさつ回りを済ませてから追いかけてこいと、やっぱりかっこうをつけて出発したところが、やっぱりといいますかおかみさんの方が先に到着して待てど暮らせどやってこない。
 ようやく到着したかと思えば、遅れた理由もしょうもなく、ただただあきれるばかり。これをいちいちとりあっていては引越も片付かないと、おかみさんはとにかく荷物を置くのに棚を吊るから釘を打ってくれと頼むと、柱ではなく壁に打ち付けて隣の家に先っぽが出てしまうという有様です。
 引越早々お隣さんにけがでもさせては一大事と、とにかく謝ってこいと命ぜられるままに家を飛び出す亭主ですが、そこはそそっかし屋の面目躍如たるところで、向かいへ行っては壁の釘が通りを越えて飛び出すものかと因果を含められ、反対側の家へ行ってはとんちんかんのやりとりをし、ようやくまちがいに気づいたかと思えば自分の家に帰ってきてしまい、ようやく目的のお隣さんでもさんざんトラブルを起こしたあげくに、
「お宅には他に釘一本打てるような男手はおらんのですか?」
「そうや! ええことゆうてくださいました。ちょいと前から腰をわるうしてる親父がおるんですが、引越のどさくさで余計に障らせてしもうたら一大事と前の家の二階に寝かせたまま忘れてきましたんや!」
「どこの世界に自分の親を忘れる人がおりますか!」
「なんですか、親ぐらい。酒を飲んだら我を忘れますわ」

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