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周園のユートピア あるいは林達夫のこと

 澁澤龍彦の「悦ばしき知恵」にあやかり、いついかなる時にも自らを見失うことなく、溌剌と学問のフィールドに遊んだ人について筆の走るままに書き綴ってみたい。いかにも楽しそうに学問や研究に向き合って微笑む人々の、その満面の笑顔をほんの片鱗でも伝え、読んでいる人にも笑いを提供したい。
 そんなだいそれた野望のもとに、つけもつけたりで「愉しき知恵」なんてきざったらしい題名をつけたからには、澁澤の轍にならい、まずは林達夫という人物にスポットを当てるのがものの道理だということになるのでしょうが、となりますと、どうしましてももう十年以上前のある経験から話を進めなくてはなりません。

 学生だった頃のゼミで、当時指導していただいていた中国哲学の専門家である中島隆博先生が、ふと思いついたように、次のような質問を投げ掛けられたことがありました。
「円の外周を表す線は円の内側にあるでしょうか、外側にあるでしょうか」
 いつも通りの低音でありながら張りのある声で、少なからずのいたずら心をこめたこの問い掛けに、室内にいた私達はすっかり困ってしまいました。
 ゼミも開始されて半年近く経っていた頃です。当初教室をにぎわしていた学生は一人減り二人減り、やがて片手で数えるにも指が余るほどになると、大学側から指定された教室では閑散として感じられるようになり、開講が喫茶店から先生自身の研究室にと転々としておりました。
 講義中のひとりごとではなく、明確に回答を求めてのものですから、だれかがなにかをいわない限りは話が先に進みません。
 その時、だれがどのように答えたのかは覚えていませんが、ただ先生は一、二度うなずきつついつも通りの「なるほど」という語尾をややあげる返事をして切り上げてしまいました。

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